瀬尾久仁&加藤真一郎ピアノデュオ公式サイト

瀬尾 久仁 & 加藤 真一郎 ピアノデュオ・リサイタル

2015年6月6日(土)14時開演 
ムジカーザ



ジェルジュ・リゲティ:記念碑、自画像、運動 (1976)
ダリウス・ミヨー:スカラムーシュ (1937)
権代敦彦:69 (2003)
ベルント・アロイス・ツィンマーマン:パースペクティーヴェンI (1955)
レナード・バーンスタイン/ジョン・マスト編曲:
 ウエスト・サイド・ストーリーから シンフォニック・ダンス (1960)
ヴィトルト・ルトスワフスキ :パガニーニの主題による変奏曲 (1941)

[主催] 瀬尾久仁&加藤真一郎ピアノデュオ

プログラム・メモ

本日演奏するのは、すべて20世紀以降に生まれた2台ピアノ作品です。若いデュオ奏者たちに新しい音楽を弾いてほしい、作曲家の方々にピアノデュオの作品を書いてほしい、そして聴いてくださる皆さんに未知の音楽の楽しさを感じてほしいと願っています。リゲティ、ツィンマーマン作品を初演されたアルフォンス・コンタルスキー先生に教わった現代音楽の魅力を少しでもお伝えできたらうれしいです。


ハンガリー出身の作曲家リゲティの《記念碑・自画像・運動》は、コンタルスキー・デュオのために作曲、献呈された3つの楽章からなる作品です。4/4(第1ピアノ)と6/8(第2ピアノ)で6つの声部が推移していく第1楽章《記念碑》は、100台のメトロノームのための《ポエム・サンフォニック》も連想しますが、《記念碑》のパルスは揺れながら興奮するリズムを生み出していきます。第2楽章《ライヒとライリーとともにある自画像(そこにはショパンもいる)》は、ミニマル・ミュージックの代表者たちを冠した題名と、その連想としてショパンの葬送ソナタからの引用が作曲者の興味を明らかにします。鍵盤を押さえたまま打鍵する特殊な奏法によって生ずる2つのピアノのずれが不思議な音世界を描きます。第3楽章《やわらかく流れる運動のなかで》は、川のせせらぎのなかの小石のように浮き上がる旋律がカノン、コラールのように響いていきます。流れはやがて奔流となり圧倒的なクライマックスを形成します。3つの楽章とも演奏は非常に至難ですが、美しさの感じられる作品で、近年ますますリゲティ作品が弾かれるようになってきたことも納得されます。

フランスの作曲家ミヨーの《スカラムーシュ》は、作曲者の最も有名な作品であると同時にピアノデュオの人気曲のひとつです。活発な第1楽章、美しい第2楽章、ブラジルに滞在していたこともあるミヨーならではの第3楽章「ブラジレイラ(サンバのリズムで)」の3つの楽章からなります。新鮮なリズムや響きや第2楽章での時間の重なりなどに、この音楽のもつ現代性を感じます。

ドイツの作曲家ツィンマーマンの《パースペクティーヴェン》。もともと2つの楽章からなりますが、初演者コンタルスキー先生の提案に従い第1楽章のみ演奏します。曲名は「遠近法」という意味で、4つの3音からなる12音音列が様々に配置され、対話します。セリー音楽といっても「空想のバレエのための音楽」という副題を持つこの作品は無味乾燥としたものではありません。以前マイアミでのアウトリーチで高校生たちの前でこの作品を演奏した際には大きな反応を引き起こしました。現代音楽が一般の人へも伝わる証で、うれしい思い出です。

バーンスタイン。世界を代表する指揮者でありピアニスト、司会者、教育者・・そして《ウエスト・サイド・ストーリー》の作曲家・・多彩な活動にため息がでます。オーケストラのための《シンフォニック・ダンス》はこのミュージカル音楽から構成されたメドレーで、「ロミオとジュリエット」を下敷きにした現代アメリカを舞台とする愛のストーリーや、群衆によるダンスなどの映画の場面を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。本日演奏する2台ピアノ版を私たちが最初に演奏したのは、NHK「クラシック倶楽部」の収録で、番組は何度も再放送されています。アメリカで演奏した際には曲の途中でブラボーとなり、母国での人気を強く感じました。

ポーランドの作曲家ルトスワフスキの《パガニーニ変奏曲》は、6分弱の演奏時間に2台ピアノの魅力がつまった名曲です。パガニーニのヴァイオリンソロのためのカプリス第24番をほぼそのままに、現代的な和声・リズムづけがなされています。

最後になりましたが、学生時代よりお世話になってきた権代敦彦先生に心から感謝いたします。
(瀬尾久仁&加藤真一郎)

権代敦彦:2台のピアノのための「69」

2台のピアノのための「69」は、2003年に一柳慧の70歳を記念して作曲。
同年3月14日、東京サントリー小ホールにおいて、一柳慧と園田高弘のピアノで初演された。

向かい合って置かれた2台のピアノは、ちょうど2人の人間が抱き合っているように見える。
数字の69が、同じようにお互いを補完しながら、仲睦まじく抱き合って見えるように。
曲は、両極の対立から始まるが、認識、接近、対話を経て、理解と一致、そして抱擁へと至る。
恰も、69のもつ、あの美しい姿を、時間の中に描こうとするかの如くに。

今日の2人は、どんな愛のかたちを見せてくれるだろうか?
(権代敦彦)